彫刻刀の値段
小学生のとき、図工で使う彫刻刀を買うことになりました。学校からは1200円の彫刻刀と3000円の彫刻刀が紹介され、僕は3000円の彫刻刀を欲しいと思いました。
しかし、母親は「1200円のもので十分!」と猛反対。結局、最終判定は父親に委ねられ、僕は恐る恐る父親に「3000円の彫刻刀が欲しい」と打ち明けました。
それを聞いて、父親は一言『道具はいいものを買え』と言いました。僕は心の中でガッツポーズをし、母親は悔しそうに顔を歪めました(笑)
実は、このときの父親の言葉が、その後の自分に大きな影響を及ぼしています。
『道具はいいものを買え』の先には、『いいものを買って長く使え』という教えがありました。父親はエンジニアでしたから、おそらく工具類のことを指して言ったのでしょうが、僕は自分の好きなこと全般に、この教えをあてはめ実践してゆきました。
バイクいじりをしますから、工具はもちろんですが、服や靴、腕時計といった身につけるものまで、できるだけ情報を集めて吟味し、『よりいいものを買おう』というのが僕の習慣となりました。
一つのモノ・コトに対して、こだわり、突き詰めて考えるようになったことで、今の自分があるような気がします。
まず、モノやコトがなぜその価格で提供されているのか、つまりコストに対する意識が深まりました。
次に、コストに跳ね返っている仕組みやはたらきが解るようになりました。
そして、仕組みやはたらきを別の方法に置き換えてみたらどうなるだろう?と、想像するようになりました。
こじつけのようですが、「値段」や「品質」という結果に対して、要因や繋がりを考える習慣が身についたと思うのです。そのことで、物事の全体像を見ようとする意識が育ったと思っています。
どんなことでも突き詰めて考えることは大事です。そうすることで、一つの物事を深く味わうことができますし、その積み重ねで、濃密な人生が過ごせるのではないでしょうか。
好きなことや趣味を通じて、ぜひ自分の世界を広げて欲しいと思うわけです。